一大サバイバル作戦を開始
その富める国が、なぜイソップ寓話のキリギリスになるのでしょう。
実は、"宝の山"も1906年に採掘に着手して以来約100年が経過し、大方採り尽くしてしまったのです。
「残された埋蔵量は、せいぜい2000万トン。
年間175万トンずつ採掘していけば、あと11年でなくなります」とナウル・リン鉱石公社の幹部。
カネを稼ぎ出す労働力は、ギルバートやツバルからのお雇い外人にまかせ、ビールと浜辺のパーティーに浮かれていると、12年後には収入ゼロの破産国家の運命が待っているのです。
「これではいけない」と、デロバート大統領が先頭に立ち、一国の興廃をかけた一大サバイバル作戦が開始されてはいます。
ひとつは、貿易収支が大幅黒字のうちにこれを投資に回し、収益を年金代わりにして食べていこうというもの。
投資の重点は航空、海運、貸しビル。
20年前、保有機1機でナウルとメルボルンの間だけを飛んでいたエア・ナウルが、今では日本、香港、台湾から太平洋の島々を経由してオーストラリアまでつないでいます。
しかし、"5人乗客"に象徴されるように経営は採算を度外視しています。
1番期待しているのがメルボルン、サイパン、香港などで経営している貸しビルですが、利益が出るのはこれからです。
もっと壮大な構想は、廃鉱で植林や農業もできない島を捨てて、国ごと引っ越そうというもの。
かつてオーストラリアが、クインズランド州の島を提供する意向を提示しましたが、国籍の問題がからんで実現しなかったのです。
デロバート大統領は、当時、フィリピンの島を2、3買い取りたいと希望し調査も行っていましたが、島とはいえ国土の"売却"だけに、フィリピン側が応じるかどうか疑問です。
わたしの会ったナウル人は一様に「たとえ廃鉱で覆われても、異郷の地で他の民族の中で暮らすよりいい」と島を離れる気持ちは持っていませんでした。